5世紀に中国の絹織物が伝わって以来、15世紀の室町時代頃までは、日本の着物は「小袖」とよばれる簡素で機能性を重視したものだった。小袖には6cmほどの幅のせまい帯が用いられていた。17世紀、戦乱の世が去って江戸時代に入ると、着物はさらに装飾性の高い形へと変化していく。
とりわけ帯は、もやは着物の一部にとどまらず、それ自体が1つの芸術と呼ばれるほどに進化していった。この時代、帯はますますその幅と長さを増し、幅にして約34cmにまで至った。柄も織り方も、さらに手のこんだ装飾性の高いものとなり、手描きで染めあげられた着物とともに、若い娘や歌舞伎役者、芸者といった人々の、それ自体「装飾品」になったのである。
今日、帯は着物にまつわる品々のなかでもっとも装飾性が高く、値のはるものになっている。その織り方や柄は何千というヴァリエーションがあり、また結び方も着る人の年齢や未婚・既婚の別、用途、季節などに合わせてさまざまである。
帯はうたがいもなく、日本の国の宝といえよう。